Rising Star
久しぶりにMETライブビューイングを観る。雨の日曜日、大阪ステーションシネマの席に着いたら、住友生命いずみホールのK君がやって来た。「おおっ、目の付け所が同じだねえ。そうそう、8月の『真珠とり』チケット買ったよ」なんて挨拶代わりに。
「運命の力」、METでは30年ぶりのニュープロダクションらしい。ポーランドの映画監督マリウシュ・トレリンスキの読み替え演出だけど、回り舞台を多用した構成がなかなか良くできている。再演になるとだんだん緩んでくるのが常だけど、動きの隅々まで神経が行き届いているのが判る。時代も場所も台本とは異質(現代に近い時代設定、場所はニューヨーク、最終場面がトリニティ墓地近くの155丁目の地下鉄駅と知れる)。しかし、違和感がほとんどなく、カラトラーヴァ侯爵とグァルディアーノ神父を同一人物と扱う着想も刺激的だ。
歌手陣はドン・アルヴァーロ役のブライアン・ジェイドはMETにありがちな声はでかいがディクションが良くないテノールということを別にすれば充実のキャストだ。何よりも、ノルウェー出身のソプラノ、リーゼ・ダーヴィドセンのレオノーラが素晴らしい。歌も演技も出色、終幕のアリアは完璧、声の厚みに不足はないし、音域のムラもない。そしてppからffまで全く無理がない。まさにVoce Verdiana、ワーグナーやシュトラウスを歌わせるのは勿体ない。1987年生まれというから、これからどこまでキャリアを築くのか楽しみな人だ。